心霊体験実話 「真夜中の手招きトンネル」

2019-8-19 | その他

 
どうも、魁莉です。
お盆休み、いかがお過ごしでしょうか。
猛暑が続く日々にちょっとひんやりとした個人的な企画です(๑╹ω╹๑ )
今回は、わたくしの友人が実際に体験した恐怖体験をもとに書き上げた小説作品を記載いたします。
 
怖い話や心霊体験・描写が苦手な方は、ここから下を読まないことをお勧めいたします。。。
 
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2000年代、某年の8月・N県-

猛暑が少し和らいだ、とある盆の夜。
夏休みの暇な時間を持て余す大学生カップルの裕也と真由は、夜のドライブを楽しんでいた。

「やっぱり涼しくなる夜はドライブに限るな」
運転席側の開いた窓から右ひじを出す裕也は、鼻歌まじりに言った。

「ねぇ裕也、ここらへん……だよね。学校でも話題になってた心霊スポット」
助手席に座る恋人の真由が、あたりをキョロキョロしながら裕也にたずねる。

「あぁ、確かもうそろだよな」
「ねぇ、マジで行くの?その心霊トンネル」
「あぁ」
「変なこと起こらないかなぁ」
「大丈夫だって。まさか真由お前、霊現象とか信じるのか?」
「そういうわけじゃないけどさ、色んな噂をあちこちで聞くから」

不安がる真由をよそに、裕也は鼻で笑い飛ばす。

「真由は心配性だな。所詮は噂話や都市伝説だ。それに短いトンネルだって聞くし大丈夫だろ」
「……うん。そっか、そうだね」
真由は自分の中の心配を強引に振り切るように言った。

「さて、行こうぜ。そのトンネルがあるA峠」

裕也が運転する四輪乗用車は大きい国道がそのまま峠につながる細い片側一車線の道を走っていく。
それまで国道には数多く存在していた街灯や他の車両は徐々に数を潜め、彼らが乗る車を照らす明かりの絶対数は少なくなっていった。
ほのかに響くのは虫の鳴き声のみで、重圧のように濃い暗闇を二人に感じさせていくには十分だった。

 

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「さて、峠に入ったぞ」
「暗いね……。電気もないし、他の車や家とか人っ子一人いないわ」
「行こうぜ」

不安がる真由をよそに、不敵な笑みを浮かべる乗り気の裕也は、ためらいもなく自車のアクセルを踏みつづけた。

左右のカーブの多いのぼりの坂道を何度となく走行していくうちに、それまで片側一車線だった道路は、気づけば中央線の姿がない一本道へとなり、その道幅もせまくなっていた。

「な、なんかどんどん道がやばくなってきたね裕也」
「そ、そうだな」
真由だけでなく、裕也にも少しずつ緊張が生じ始めていた。

緊張感に比例するかのように増していく暗闇と狭くなる道は、二人を乗せる車両をどこかへ招いているような感覚を徐々に二人に植え付けていく。

最初は張り切っていた裕也の口数は減り、それを真由に気づかせたくないかのように車内に流れるBGMの音量を少し上げる。

そして、のぼりカーブを走りきったと同時に減速した彼らの乗る車両は、ゆっくりとその動きを停めた。

「つ、着いたぞ真由。例のトンネル」
「ここが……」
「あぁ、うわさの『手招きトンネル』だ」
「ねぇ裕也、本当にここくぐるの?」
「な、何言ってんだよ。ここまで来て引き返す気かよ」
「だって見てよ、このトンネル……」

裕也と真由は、停まっている車の席から目の前にそびえるトンネルを改めて見た。
高さは4メートル弱ほどで、横幅は大型車両が何とか一台通れるかほどの狭さ。

頼りになるのはぼんやりと辺りを照らす満月の明かりと車両のヘッドライトのみ。
距離は100メートルないほどのものであるも、正面からライトを照らしても先が見えないほどトンネルの闇は深かった。

「よし、行くぜ」
息を呑みながら、裕也は意を決した合図として車のギアを『D』に入れる。
アクセルを踏み込んだことで、二人を乗せた車はトンネルの暗闇の中に吸い込まれるようにゆっくりと入っていった。

 

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「……」

「……」

車体全体がすっぽりとトンネルの中に入ると、二人はしゃべることを忘れ、左右の横幅に気をつけながらただ真正面の先だけを見つめていた。
徐行する車両のライトが照らす先は、深い闇のために未だ見えてこない。

 

 

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「すごい暗いな……」
「……ねぇ裕也」
「どうした?」
「さっきから何も聞こえないし静かだよね」
「あぁ、静かだけど-」

二人はここで息を呑みながらハッとした。
峠をのぼってくるときからスイッチをずっと切ることなく流していたはずの車内BGMが流れていない。

「真由、音楽止めるなよ」
「私、止めてないよ?」
「えっ??」

すると、その時だった。
浅くアクセルを踏み徐行していた車両は、動くことなくその場に止まっていた。

「ちょっと裕也、こんなトンネルの真ん中でとまらないでよ!」
「いや……」
「えっ?」

裕也の表情が少しずつ青ざめていく。

「動かないんだ……」
「えっ、どういうこと?」
「動かないんだ、アクセル踏んでも発進しないんだよ!」
裕也は静かに声を荒げた。
真由は開いた口が塞がらず、辺りをキョロキョロと見回す。
彼女の視界に映るのは、狭く圧迫感のあるトンネルの壁とズッシリとのしかかる闇だけだった。

継続するエンジン音だけが、重い沈黙の中で際だっている。

「ちょっと、どうすんのよ裕也!?私こんなところで往生とか嫌だからね!だからやめようって言ったのに……!」
「くっ……どうして……!」
未知の恐怖に苛立ちを隠せない真由が泣きそうになる中、裕也はどうしたらよいのかわからない状況に焦りを隠せず、ただアクセルを何度も踏み直すことしかできなかった。

「くそっ、動け、動いてくれよ頼むから!」
しわをよせた眉間に冷や汗が生じきっていたそのとき、再び二人が乗っている車両は徐行よりも遅いゆっくりとした速度で前進を始めた。

「な、なんだ?」
裕也は不思議に思い左右に顔を振って辺りを見回した。

「やったわ、動いた!これで帰れるわ!よかったぁ〜、ねぇ裕也!」
ため息とともに安堵の表情を浮かべる真由は、裕也の方を見た。
すると、彼は何かにとりつかれたように茫然としたまま動かない。

「裕也……?」
「真由……」
「どうしたの?」
「今車が動いてるの、俺じゃない……」
「えっ?」
「だから俺……今アクセル踏んでないし……」
「……えっ」

すると、ゆっくり前進していた車は、ぼんやりとトンネルの出口がわかるその10メートルほど手前で再び停止した。

「……んで……」

「真由、今なにか言ったか?」
「え?いや……私は何も……裕也じゃなくて?」
「いや、俺も何も-」

「……なんで……」

「私たちの声じゃ……ないよね……これスピーカーからだもん……何よこれぇ」
「は、早く行くぞ。もう一回アクセル踏みまくるから、そしたら-」

そう言いかけたとき、彼はふと目にしたバックミラーに映るものを見て絶句した。
その彼の視線の先に、真由がゆっくりゆっくりと視線を合わせると-

 

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暗闇の中のバックミラーにぼんやりと映る瞳が、二人を見つめていた。
夜の峠の気温のせいだけではない凍るような感覚が、二人を未知の恐怖に招き入れるように襲い掛かっていく。

「……!!」
何も言葉を発することができない裕也だったが、右足にありったけの力を込めてアクセルを無意識に踏み付けたときには、ぼんやりと周囲の山林の姿が目の前にあった。

「あっ……裕也」
「はぁ……はぁ……」
「トンネル……」
「……抜けたようだな、俺たち」
「……うん」

裕也と真由を乗せた車は、すでにトンネルを抜けた30メートル先の路肩に停止していた。
周囲の山林を照らす月明かりの存在を白夜と勘違いするほど、二人の視界は重い暗闇に支配されていた。

「バックミラー……何もいないね」
「あぁ……」
気づけば再びBGMが車内に流れる中でも、裕也と真由はそれ以降帰宅するまで何も言葉を発さなかった。

後日、裕也と真由はA峠の「手招きトンネル」のことを調べた。

1890年代に建造されたそのトンネル周辺では、かつてバラバラに切断された幼い子供が遺棄された。

また、恋にやぶれ悲しみに暮れた女性が峠から何度となく身を投げ、その遺体が発見されていた。

様々な人間の死の逸話をもつA峠のトンネルでは、峠で命を失った人間たちの霊がトンネルの暗闇に集まり、そこを通る者たちの前に現れていた。

そして、「彼ら」は今でも“手招き”をしているという。

 

WRITER- 魁莉 -

魁莉

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